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研究の内容

予防医学

黄砂・大気汚染物質と感染症から身を守るにはどうしたらいいのか。予防医学の観点から予報・診断・対策の研究を進めています。

疫学と予防医学

予防医学は、病気になる前に対策を取り、病気になる前に防ぐことが目標です。そのための重要な知見を得るために、疫学という手法を用います。
有名な例が、1850年代のコレラの流行(ロンドン)の時に行われた記述疫学です。今となっては、コレラはコレラ菌によって引き起こされるということは当たり前となっています。
しかし当時、顕微鏡がないため、原因となるコレラ菌を見つけることはできませんでした。しかし、ジョン・スノウは、疫学調査から井戸水が原因であると特定しました。井戸を使えなくすることによって発症を予防し多くの命が救われました。
コッホがコレラ菌を見つけたのは、1883年ですので、疫学がなければ、30年もの間、人が死に続けていたのかもしれません。
疫学の醍醐味は「原因物質が分からなくても病気が防げる」ということにつきます。
現在、目に見えない微量の大気汚染物質による体調の不具合や病状の悪化が報告されています。この原因物質を突き止めるには、かなりの時間と労力を要します。この原因物質を突きとめてから、対策を取るということはロスが大きいです。
その間に多くの人の健康が脅かされてしまいます。すでに健康影響が注目されている現代において、無駄に過ごす必要はありません。
健康影響に関する発表や報道がされても、どうしたらいいの?それは自分に危険なの?と煮え切らない思いをされた方が多いと思います。
私は、健康影響のみを述べるだけではなく、対策や現状について同時に研究を進め、トータルで語ることに努めています。
そうして、客観的データに基づいた結果について,学会、論文での発表にとどまらず、一般の方へもしっかりお伝えすることに務めます。

マスクの漏れ率の計測

みなさんは、普段着用しているマスクがどれだけ漏れているかご存じでしょうか。
労研式MT-03(SIBATA)を用いて漏れ率を計測してみましょう。
マスクの外側の粒子とマスクの内側の粒子の数を計測して、外側の粒子がマスクの中にどれだけ入っているのか調べることができます。

マスクの漏れ

マスクの正しい知識と着用方法を!

マスクの機能と目的

  1. 外の粒子を体内に取り込まないようにする
    外の粒子を体内に取り込まないようにする

    この目的の場合、下記の項目をチェックしてから着用する必要があります。

    • マスクのフィルターが粒子を通さないか(どの大きさの粒子までカットするマスクなのか)
    • きちんと装着できているのか(自分の顔に合っていて隙間がないかどうか)
  2. 菌やつばなど、くしゃみをしたときに外に飛ばさないようにする
    菌やつばなど、くしゃみをしたときに外に飛ばさないようにする

    (他の人にうつさないようにする)
    たとえば、手術中に患者様のお腹(清潔野)に排菌しないために着用するサージカルマスクや、料理につばを飛ばさないようにコックさんがマスクをつける例です。感染者が撒き散らさない。

  3. のどの粘膜を加湿・保温して保護する。
    のどの粘膜を加湿・保温して保護する。

    ガーゼのマスク、鼻を出してつけていてもある意味のどの加湿が目的であれば問題がないことになります。

番外編

  1. 顔を隠す(剃り忘れた無精ひげを隠したり、女性の方は特にノーメイクの時に。)
    これも、ちゃんとしたマスク着用の目的になります。
  2.  

マスクの種類

マスクは様々なものがあふれていますが、目的に合ったマスクを正しく選択することが大切です。

絶対に粒子を体内に入れたくない場合のチェックポイントは、

  • フィルターの性能
  • 装着時の密着(顔にフィット)
  • 息苦しくない

みなさんは、PM2.5のような外の粒子を体内に取り込まないようにするために、どのマスクを選択しますか?

マスク 家庭用不織布のマスク 医療用のサージカルマスク 産業用のN95マスク 防毒用マスク
  • A.家庭用不織布のマスク
  • B.医療用のサージカルマスク(実はAと同等品)
  • C.産業用、医療用のN95・DS2マスク(不織布)
  • D.防毒用マスク

多くの方がドラッグストアやコンビニで手に入れられる、Aの不織布のマスクを選択されると思います。Aのマスクは、フィルター自体はPM2.5をカットできるものも存在していますが、顔にフィットせず漏れが大きく、完全に防げていない現状があります。漏れ率が100%の人も多く、平均では72.82%も漏れていました。
Bのマスクも、Aと同じく外の粒子を防ぐ事ができていないことが多いです。
Cのマスクもフィルターも高性能ですが顔にフィットせず、漏れてしまっているようです。周りを押さえると息苦しいですが、ある程度防げている場合があります。この状態で効率よく長時間の作業ができますでしょうか。
Dのマスクは自衛隊など1粒も毒を吸入しないように研究されて作られています。フィルターで物理的に有毒物質を取るだけではなく、化学的にも吸着しています。

自分の身を守るためには、Dのマスクを着用すればいいのですが、普段の生活でDのマスクはつけることはできません。
そこで、大切になってくるのが、マスクの正しい知識と着用方法なのです。
特に産業現場で曝露される機会のある方は、要注意です。医療現場で働く人、廃棄物の処理、車の排気ガスの検査、原発で働く方、また、労働者の健康を管理している方は、防護不備で裁判沙汰になる可能性があります。マスクが漏れていたことを知らなかったでは済まされません。

一般マスクと目とのサイズ比較

一般の方へ

マスクを着用しても花粉症の症状が治まらないという方は、マスクの種類と着用方法を見直してみてください。きちんと粒子の侵入を防いで息苦しくないマスクをつけるだけで目の症状も抑えられたという報告があり研究を進めています。不織布のマスクでは、漏れ率を30%以下にするのは非常に困難である現状があります。
近年、テレビなどでマスクは漏れているもので、仕方がないという話で終わってしまう演出を多く見かけます。では、どうしたらいいのか本研究ではさらに追求をし、役立つ情報を発信しています。(2014年4月)

産業の方へ

医療現場や粉じんの飛来する環境で、仕事をされている方は、100%防護できるマスクの着用が必須となります。このようなマスクは、息苦しかったり熱くなったりします。特に体を動かす事が多いので不便を感じておられる方も多いと思います。平成28年からブロワー付きのマスクが義務づけられます。こちらは、息苦しくなく、陰圧によっても粒子の侵入を防ぐことできます。熱さについては、現在共同研究を行って、労働・運動時にも着用できるマスクの開発を進めています。

ウイルス感染予防を目的とされる方へ

ウイルスも細菌も粉体であるため、大気汚染物質や花粉と同様の考え方になります。飛沫感染や空気感染のリスクが高い場面においては、防じんマスクを選択しなければいけません。さらに、正しく着用しフィットテストを行い息苦しくないものを選択しなければなりません。 医療現場に限らず、不特定多数の人と接する機会がある職業も感染リスクが高いと言えます。そのため、旅行関係者(ガイド、運転手等)、取材クルー、繁華街などでは感染リスクを減らすためには、最低限防じんマスクを選択する必要があります。特に感染リスクのある人と最初に接触する可能性のある人は、日頃から肝に銘じておく必要があります。仕事で感染後に家庭へウイルスを持ち込んでしまいそこから感染を拡げてしまいます。通常の不織布マスクでは、PFE(0.1μm)の透過試験が99%以上であっても顔とマスクの隙間からの侵入を考慮しなければ感染対策になりません。いざという時のために日頃から、流行感冒に備えてマスクの知識を身につけて、正しいマスクを備蓄しておくことが運用上大切なのです。今のマスク流行の状況ですとパンデミックの時に無力になってしまい、最初に感染者と接触した人から感染を拡げてしまいます。
防じんマスク=国家規格を通ったマスク(N95,DS2)のこと

2020年4月追記
中国の国家規格KN95は、N95相当とされていますが、OSHAが完全に認めたわけではなくマスク不足の一助にと許可したものですので、過信は禁物です。 顔へのフィットとともに、フィルター性能もチェックした方が良いでしょう。(2020年4月20日)

いつマスクをつけたらいいの?

PM2.5量の予測、黄砂予測の環境予測が公表されていますが、数値の多い少ないでは分からない方が多いのではと思っています。そこで、本サイトでは、健康予報を公開しています。
この予報は、過去の自覚症状悪化リスクのデータを元に算出しています。
アンケート調査(IMASORA自覚症状調査)にご参加いただくと自分の短期影響の基準値を見つけるお手伝いをしています。
同時に本研究データが、短期影響を指標とした環境基準値の設定の研究に貢献することを期待しています。

IMSORAとは
登録はこちら(リンク)

みんなの参加

〜予防知見の取得〜

IMASORAでは、自分の自覚症状と環境データの関係を比較することで、自分の、基準値を算出し診断することができます。予測を元に今日の行動に対する知見を得ることができます。

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新型観測器の開発

アレルギー症状の発生

1.アレルギー症状の発生

環境によるアレルギー症状

  • 体の調子がおかしい、自覚症状の悪化
  • 喘息、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、花粉症の悪化
  • 風邪、インフルエンザ

2.暴露因子をチェック

飛来物質、大気状況をチェック

  • 既存データと成分分析データの蓄積
エアロゾル判定小型新マシーン

3.アレルゲンの評価

自身に症状を引き起こすアレルゲンの確認

  • この日は症状が出る
    何が飛んでいるのか知る事で、自身の感受性物質を知る
  • この日は症状が出る
    この日〇〇が飛んで来ているが自身には感受性がない
エアロゾル判定小型新マシーン

4.対策を取るべき日を同定

自分に症状を引き起こすアレルゲン飛来日をチェック

  • 体の調子がおかしい、自覚症状の悪化
  • 喘息、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、花粉症の悪化
  • 風邪、インフルエンザ

5.予防行動

効率よく対策を取る

  • 既存データと成分分析データの蓄積、正確性

6.アレルゲンの評価

症状の悪化を予防

  • 無用な受診・入院を避ける
  • QOLの向上
  • 医療費の削減
  • 診療への貢献
[ひとやすみ]

ホルムアルデヒドに関する法規制の強化

平成20年3月1日に労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則(特化則)が改正され施行されました。
ホルムアルデヒドは健康障害発生リスクが高い化学物質として第3類物質から特定第2類物質に指定されました。
作業環境測定の実施が義務づけられ、管理濃度が0.5ppmから0.1ppmとなりました。曝露防止措置が講じられない場合は、罰金または懲役の罰則が科せられるようになり、予防への意識が高められました。
ホルムアルデヒドと聞いて思いつくのが解剖実習ですが、将来、医療を担っていく学生へのアルムアルデヒドの曝露量は高いと思います。労働衛生安全法で、労働者(教員)の体は守られないといけませんが、学生は果たして範疇に入っているのか取り扱いが気になります。