第3回 マスクのパッケージ表記〜99.9%カットの真実〜
正しい知識を持つ者だけが生き残る?
皆様は、マスクのパッケージをじっくり見た事がありますでしょうか。 「花粉」「PM2.5」「ウイルス」「黄砂」「99.9%カット」「立体」「三次元」「フィット」という文字が目に入ってくるのではと思います。 最近では、「メイクが落ちない」「香る」という宣伝も見かけるようになりました。
PM2.5が話題になり、マスクに求められる機能が多様化していることが伺えます。しかし、マスクは何のためにそもそもつけるものでしょうか。 体に害を与えるウイルスや粒子を体内に取り込まないようにマスクを着用されていると思います。 しかし、現実では、普段着用されているマスクの中にほとんどの粒子が漏れて、体内に入ってしまっているのが現状なのです。(グラフA,B)
粒子を「99.9%カット」と記載されると、漏れはたったの0.1%で、体内に、ほとんどの粒子が入ることを防ぐことができると期待されるかもしれません。ところが、パッケージをよく見ると、「感染や体内の取り込みを完全に防ぐものではありません」と明記してあります。 矛盾している?偽物?実は、フィルター自体の性能(捕集効率)としては粒子を99.9%カットしているという意味なのです。 実際には、着用した場合に、「99.9%」の捕集効率を発揮するのが難しいのです。着用した際にできる隙間から、外の粒子がマスクの中へ漏れ込むということです。「99.9%カット」=「体内への取り込み率」ではないのです。 つまりフィルターの性能だけを語っていてもだめなのです。体を守るには、ただマスクをつけるだけではなく、「正しい着用方法、自分の顔の大きさにフィットしているか」が重要です。(グラフC) 花粉症の方がマスクをしているのにくしゃみをしている理由は、花粉がマスク内に漏れて体内に取り込まれているからです。
2003年頃にアスベストの問題が話題になりました。その際に、作業現場でマスクをしていても粉じんが侵入していることが判明しました。これをきっかけにマスクは製品の性能以外に「マスクと顔の隙間」の問題がクローズアップされ、「マスクフィット」と盛んに言われるようになりました。 マスクを効果的に使用するには、フィルターの性能だけではなく、正しい着用方法、自分の顔の大きさに合うか、フィットしているかどうか、息苦しくないかが重要です。
それにしても、この漏れ方は尋常ではありません。もし、これが人に感染する鳥インフルエンザや治癒が困難なウイルス(SARS やMERS)に遭遇した際に我々はなすすべがありません。ボランティアでエボラ出血熱の治療にあたった医師や看護師が亡くなっています。彼らはウイルスとの接触や取り込みを防ぐことができなかったのでしょうか。医師や看護師が死んでしまったら誰も助けることができません。
ただマスクをつけて、大丈夫と思い込んでいるだけでは、体を守ることはできません。マスクの技術は進んでいます。自分の顔に合った正しいマスクを選択し、きちんと着用する事で防ぐことは可能です。(グラフC)
PM2.5という言葉が世に認識され、マスクを着用する場面が増えています。
今はまだ、マスクが漏れていても致死性は低い状況です。しかし今こそ、正しい着用方法をマスターする練習期間なのかもしれません。
このマスクの教育こそが、
将来、起こるかもしれない未知のウイルスやパンデミックに対抗する人類最大の知恵になるのかもしれません。
*症状がある人は咳やくしゃみによる飛沫の飛散を防ぐために、漏れ率にかかわらず積極的にマスクを着用するようにしましょう(咳エチケット)。

図 マスクの漏れ率 調査 (鳥取県米子市94人で実施)
A 普段着用しているマスク (平均92.35%の漏れ)
B Aと同じマスクでマスクの周りを手で押さえて漏れ込みを防いだ場合(平均74.56%の漏れ)
C 自分の骨格に合った息苦しくないマスクを選択、正しい着用方法を指導した後(平均2.62%の漏れ)
グラフのCでは、労研式マスクフィットテスターMT-03(柴田科学)を用いて繰り返し漏れをチェックして、正しく着用している感覚を指導しました。 皆さんが、このような測定が出来れば良いと思いますが、実際は出来ないことが多いと思います。
その場合は、一般的な密着確認方法(セルフチェック)を紹介します。
- ⅰマスク装着後フィルター面を手で覆う
- ⅱ息を吐き漏れがないか確認
- ⅲ息を吸って漏れ込みがないか
この確認で、マスクからの漏れが感じられなければ「顔にあったマスク」「正しい装着に沿ったマスク」と言えると思います。
これは、感覚で確認するやり方ですので、いつかMT-03を用いてマスクが密着している感覚を養うことが必要になると思います。
マスクでの防護能力を身につけておきましょう。
このようなMT-03を用いたマスクチェックと啓発を山陰各地に赴いて実施しています。
(2015.10.1)